大きな力に委ねる

マインドフルネスという言葉を聞いたことがありますか?

最近の『New York Times』のコラムでは、一つの流行言葉として取り上げられています。

マインドフルネスを用いると、薬を飲み続けた場合と同等にうつ病の再発を防げることがわかりました。

『Lancet』という格式のある科学雑誌にイギリスのグループが報告したものです (参照)。この研究では400人以上の抗うつ剤(うつの治療薬)を服用し続けている患者さんが対象となり、一群は薬を飲み続け、もう一方の群はマインドフルネス認知療法というカウンセリングを受け、薬を徐々に減らし中止しました。2年に及ぶ経過観察の結果、両者に再発率の違いはありませんでした。

うつ病は再発を繰り返す場合があります。それを防ぐために薬を服用し続けるケースは少なからずあります。しかし、いつまで服用する必要があるのか、どうやったら服用を安全にやめられるのか、という議論は未だにあります。上記の報告では、マインドフルネスの手法が薬の代わりになりうると示した点で画期的なわけです。

このマインドフルネスですが、『Psychology Today』という雑誌では、

Mindfulness is a state of active, open attention on the present. When you're mindful, you observe your thoughts and feelings from a distance, without judging them good or bad. Instead of letting your life pass you by, mindfulness means living in the moment and awakening to experience.

と定義されています。

「良し悪しの判断抜きに、積極的に『今』へ注意を向ける」ということです。「今」のなかには、自身の考え、気持ち、感覚なども含まれています。

元来は、仏教の「サティ」という言葉から発しているとされています(第21回 : スピリチュアリティとこころ)。1800年代、ビクトリア時代のイギリスの人物が、スリランカを訪れた際、出会ったという経緯のようです。西洋の東洋傾倒とでもいいますか、欧米で盛んに取り上げられ、そして、科学的根拠が加わってきているのです。

『Psychology Today』から幾つかマインドフルネスの練習法を取り上げてみます。

時計を反対につけてみる、コインを靴に入れてみる、待ち時間に何もしない喜びを感じる、レーズンを初めて見たかのように一つずつ食べてみる、色々なことを新しい方法でやってみる、足の裏に注意を向ける、周りのものに目を向けて名前を言ってみる、など。(参照

ダンスなどのパフォーマンスを考えずにする(unselfconsciousness)。先々を考えない(savoring)。フロー(flow)流れにまかせる:形、計画から離れる。(参照

先の研究では、ぶどうを口に入れて味わうことからカウンセリングが始めるとか。そして構造的なフォーマットで治療が進められていくのです。

精神科医の香山リカさんは、自分が歩く様子を実況中継するのを一つの例に挙げていました。

さらに、よく知られた練習法には「自分の脇を川が流れ、そこに木の葉が上流から流れてくることをイメージする。木の葉に自分の気持ちや考えが乗っているとイメージする。そして木の葉が下流へと流れていく様子を良し悪しの判断抜きに傍観する」などもあります。

そして、瞑想、呼吸法、これらは外せません。起源を考えると頷けますが。

薬を飲み続けることへの抵抗感は多くの方がお持ちです。その点、薬以外の選択肢があるということは朗報です。一方、2時間半にわたるカウンセリングを、先の研究では8回以上も行っています。それよりも薬を1日一回飲む方を好む人もいるかもしれません。

 

研究では、マインドフルネス認知療法を受けて薬をやめた群と、薬を続けた群では、費用に違いはみられなかったそうです。どちらを選ぶか。いずれにしても、科学的根拠をもったさらなる選択肢が生まれたことは、個人個人に合った治療を行う助けになります。マインドフルネスを用いたアプローチにご興味のある方はご相談ください。