旅薬
人とのつながりからこころが癒されることを「人薬」と表現した人がいます。
旅にも効用があるようです。
個人的に旅が好きだということもありますが、旅がもたらす様々なこころへの好影響を多くの方が経験しているのではないでしょうか。
旅は観光と違い、目的をもたない自由な要素があるといいます。最低限の予定だけたてて、あとは風の向くままに。そこに旅の効能のヒントがあるのかもしれません。いつもの生活では、様々な枠組みにとらわれて生活をしている。そこから解放される。
一人旅もよいでしょう。
京都で、鈴虫寺に何度も訪れるという一人旅の方に会いました。暇ができれば東京からわざわざその目的のために訪れる。そしてそそくさと現実へ帰っていく。こころの洗濯というものでしょうか。他にもご自身の特別なスポットをもっていて、そこへ行けばなぜか癒されるというのはありますね。
「ホームタウン効果」というのも経験します。
海外に住む方には殊の外関係してきますが、日本に、そしてふるさとへ帰ることが、こころの癒しになることです。ふるさとの人間関係がゆえに、それがかなわない方もいらっしゃると思いますが。
我々は、どこかで安心というものを必要としています。母国を離れていることで、目に見えない不安があるのでしょうか。原点に帰って、こころを休めることはよい考えだと思います。
旅に出ると、まず世界が広がります。
普段のひとところで過ごすことからくる澱みから解放され、旅先の広がりが自分の座標軸をリセットしてくれるようです。
見たこともない新たな場所でしたら、そこに新鮮な刺激をみつけるかもしれません。マインドフルネスの考えからすると、その新鮮な視点が地に足がつくことを助け、脳を緩めることになる。
自然に触れる機会も増えますか。
なぜか(これも回帰現象なのでしょうか)自然は人間のこころにとってよい。
パニック発作を経験する方に旅を勧めることがあります。
パニックというのは、人間元来の「自由への渇望」と「制限への抵抗」が根っこにあると思います。それと同時に「孤独への恐怖」がある場合も多い。
旅、特に一人旅は自分を孤独に曝し、孤独への耐性を作る助けになります。と同時に、自由へ身を置くのです。お勧めします。パニック経験者の長嶋一茂さんは、一人で行動する機会をあえて作ると、著書で書かれています。
人間は日々周囲へ依存しています。
その見えない依存の糸を一度切ってみませんか。
旅はその機会を提供してくれるかもしれません。新たなステージが見えてくるかもしれません。
そう、日頃の雑多を離れ、考える時間ができるのもよいでしょう。
旅が与える効能は計り知れません。