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コロナウイルスと集団心理

ある日、ショッピングモールにいると、急に避難サイレンが鳴りました。人々は何だろうと思いながら歩いて出口へ向かいます。「大したことじゃないだろう」という空気が、あることで一転します。1人の客が走り始めたのです。すると途端に、全ての人々が走って出口に殺到することになりました。

この状況は、集団心理を示しています。1人の反応が、他の人の恐怖を急激に高め、集団パニックとなったわけです。今の新型コロナウイルスと状況が似ています。

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不安の心理テストができるサイト「Anxiety Test」では、アクセス数が2月に20%近く増えているようです。メンタル電話相談の件数も増えています(*1)。

新型コロナウイルスに伴う集団心理は、SARSなどの時よりも、エイズウイルスや不特定殺人が起きた時と似ているという向きがあります(*2)。

コロナウイルスの不明性やランダムで「見えない危機」は、私たちにより強い不確実性をもたらしているのです。自分だけに踏みとどまらず、周囲がどう反応しているか、自分に対してどう反応するか、情報を共有することによる反応といった、集団としての不安の連鎖も特徴です。便乗して不安を助長する人もいれば、非日常に気分が高揚している人もいます。

マルコム・グラッドウェルは20年前に「Tipping Point(急に堰をきるポイント)」という本を書きましたが、エピデミックについて興味深い記述があります。それはある時、急激に起きる変化です。大事なファクターは、ワード・オブ・マウス(人から人への言葉のパワー)。

人って、耳寄りな情報を持つことを話すことを自慢に感じるところがあり、このような時、一気に広がります。ジムのトレーナーといつになく話が盛り上がったのを思い出します。そこにはひそかな興奮と情報通合戦もあったりします。ほんの数時間で状況が変わり(これはウイルスの力)、そして情報も変わる。

Office Coffee Break

なんだか、その急なスピートに非日常感を感じたことはありませんか?あれよあれよと常識のスピードを超えてことが起こる。これがパニックの原因です。さらにはコネクターやスティッキング・フレーズ(頭に残るフレーズ)の存在。

前者はインフルエンサーのようなもので、場合によっては武漢の医者というチェーンメールのように悪用されることもあるので要注意。後者は流行語大賞のようにあるフレーズが伝播を促進すること。このように個人の不安を超えて、集団のダイナミクスが不安の渦を生む特異な状況なわけです。トイレットペーパーを買い込んでいる人がいたら、急に自分もと思う。ショッピングモールで走り出したのとそっくりです。

このような状況に、どのように対処したらよいでしょうか?

Woman Holding a Mobile Phone

1.メディア情報を限定する。

東日本大震災の時に、メディアで流された映像が、二次的なトラウマを生み出したことを覚えています。メディアは情報源であると同時に、諸刃の剣になります。メディアをチェックする頻度に注意します。できたら信頼できるメディア筋に限定しましょう。

 

Availability Biasという言葉があって、目の前にある情報ほど人は影響されやすい。刻々と変わる情報に人は振り回されます。このような状況では、情報に対して過覚醒状態になることが知られており、情報に吸いつけられやすいのです(*3)。チェーンメールに左右されてしまうのもその例でしょうか(例の「お湯を飲むと良い」というチェーンメールの真偽について日本から問い合わせがあり、アメリカの早朝にも関わらず調べて損をみた経験があります)。

2.できることに特化する。

不確実性の中で、完全な対応というのはありません。自分ができることにフォーカスしましょう。例えば手洗いとかですね。全てをコントロールしきれないことを、どこかで受け入れます。

3.回避しすぎない。

トルコで地震があった時、避難所から自分の生活へ戻るのが遅かった人ほど、メンタルの回復が遅かったそうです。コロナウイルスの場合も、引きこもってしまったり、やるべきことすら拒否してしまう人がいるようです。極端な回避は、生存のためにかえって役立ちません。

Supermarket Trip

4.歪みに気づく。

不確実性のなかで、人間は物事の捉え方に歪みを生みがちです。危機を過大評価したり、一方で自分の対処能力を過小評価したりです。「パニック買い」も歪みの表れですし、アメリカでは外国人嫌悪が問題視されています。もともと偏見がある人は、そういった嫌悪を持ちやすい傾向にあります。非合理的な考えが、偏見や極端な行動の温床となるのです。

 

911の後に、飛行機の利用が減った一方、交通事故が増えたという皮肉も人間行動の一例です。ロサンゼルスでエレベーターに乗った際、すでに乗っていたアメリカ人が軽くマフラーで口を覆いました。私をアジア人と見たからでしょうか。あるいはそう思ってしまう私に歪みがあるのかもしれません。

5.メンタルヘルスの問題を抱えている方へ

不安の問題を抱えている方には、特に試練の時かもしれません。健康不安、全般性不安性障害、あるいは強迫性障害など高まる可能性が言われています。上記のように、極端な考えに陥らないよう心がけ、必要に応じてケアを受けましょう。対処能力を信じましょう。

People Walking

総合すると、平静な目をもつということでしょうか。木を見て森を見ずにならず、どこかで自分も含めて全体を冷静に観察できることが秘訣です。不安の渦の外にいて、冷静にみる目を心がけましょう。理性を発動し、渦に飲まれないよう。

状況を正に転じ、健康管理に努める、人類全体として乗り切る試練と受け取るなどは、より良い受け止め方です。さらに深めていくと、人間のエゴが垣間見えます。ハンセン氏病、ユダヤ人に対する人類の歴史などは、事の核心が通じる部分があります。

このような時こそ、人道的な行動を取りたいですね。ある方はこう言っています。「パニックになることは、ウイルスの脅威よりもより大きなダメージを与えかねない」。イーロン・マスクは、ツイッターで、「Fear is the mind-killer」とつぶやいています。恐怖は人の心を殺すみたいな意味ですかね。彼のような人物は、日々恐怖やリスクと対峙している人だと思います。このような時期だからこそ立ち上がれる人をモデルにしてみませんか。

1984年のHIVウイルスの当初、感染経路がわからず、人の対面が憂慮された時期がありますが、今はビデオカンファレンス技術があります。人類は進歩しているのです。

ある日、スターバックスへ行くと、誰か咳をしていないかという暗黙の緊張が店全体に感じられました。アジア人は私ぐらいです。店から外に出る時、ドアを持ってくれる白人の男性がいました。こんな時こそ、そんな親切がありがたく感じます。そんな行動こそが不安を乗り切る力ではないでしょうか。

Doctor and Patient

補足

コロナウイルスについて、以下はデータを客観的にわかりやすく提示していると思います。ご参考までに。
Newspicks 「最新版:新型コロナのすべて」 ※利益相反はありません

《参考文献》

  1. Mother Jones 3月9日付け
    “Mental Health Professionals Are Preparing for an Epidemic of Around the Coronavirus”

  2. Chicago Tribune 3月9日付け
    “Some with OCD, other anxiety disorders are struggling amid the coronavirus epidemic. ‘It’s tripping the wire for many different people.’”

  3. Quartz 3月9日付け
    “The Psychology of Coronavirus Fear- and How to Manage it”

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