日本の開国

皆さんには周知のことだったかもしれませんが、稀にしか日本を訪れない者にとって、訪日外国人(インバウンドと呼ぶそうですが)の年々増加は顕著です。実際数字を見ると、2017年には年間3000万人近くとなり、数年で2~3倍の増加のようですね。デフレ、円安、航空運賃値下げ、ビザ緩和、国土交通省の戦略、海外旅行の増加、東京オリンピック、アニメ、和食等の日本文化など、さまざまな理由があるようですが、日本の皆さんはどれくらい心構えができていたのでしょうか?

長野の山中に地獄谷という場所がありますが、日本ザルが温泉に浸かるというあの場所です。日本政府観光局のサイトに出ているからでしょうか。訪れると、日本人観光客はみられず、インバウンドの8割近いという東南アジア人も稀で、10%前後といわれる欧米人がほとんどでした。

 

その麓の渋温泉という味のある温泉地も、浴衣を着て闊歩するインバウンドの方が多いのに変わりはありません。地獄谷行きのバスの運転手さんが(日本人の方でした!)、ジェスチャーでインバウンド観光客に説明する姿は、この素朴な地が急激な変化に追いついていないことを物語っていました。

 

「フクロウ」カフェのようなところが人気観光地だそうなので、動物保護的に日本ザルを間近に見れることは欧米人にとって稀有な場所なのか、あるいは地域をあげての宣伝効果なのかわかりませんが(日本の中心線を南北に走るこの地域は「ドラゴンロード」として観光誘致されているそうですね。

 

北陸新幹線の存在も大きいようです)、この純日本的な場所が、このような状況になっていることは、驚き以外の何ものでもありませんでした。温泉街の素朴な喫茶店の方は、戸惑いと若干の抵抗感を隠せず、外国人に人気の折り紙を無料で教えている方は、それを商売にしようという風でもありません。

一方、東京の「国際化」は一段と拍車がかかった感がありました。コンビニエンス・ストアの店員の方はより外国人の方々が増え、また飲食店の店員の方もそうでした。「日本の技術を学んで本国で生かしていただく」というコンセプトの技能実習生がコンビニエンス・ストアや建築業界に多いこと、はたまた日本の好景気でパートタイム労働者の不足が原因とのことなど後で聞きましたが、映画『ブレードランナー』で未来に飛んだような隔世の感は否めません。留学生の方たちを含め、日本に暮らす外国人の方たちも、250万人を超えてきているようです。これもやはり、先の国土交通省の戦略同様、10年来でじわじわ起きてきていることのようですが。

東京オリンピック前後に関係なく、この傾向は続くようです。経済効果など考えると、決してネガティブなことではないでしょうが、ふたたび素朴な疑問が浮かびます。日本の方は、準備オッケーだったのでしょうか?この「静かな開国」は、蒙古襲来やペリーの黒船の時よりも大規模で、しかもノーリターン(戻ることがない)の可能性が高いのです。

一方、アメリカはトランプ大統領となり、一つの恩恵があります。それは、多様性(ダイバーシティー)への関心が高まったことです。先のアカデミー賞では、最優秀主演女優賞を獲ったフランシス・マクドーマンドさんが受賞スピーチの際に言った、「インクルージョン・ライダー」が話題となりました。俳優などが契約時に、フィルムに携わるスタッフが多様性に配慮されて選ばれていることを求めるというコンセプトです。このセレモニーでは女性への虐待なども問題となっており、アカデミーの多様性に配慮した大きな流れは加速しているようです。公民権運動は言わずもがな、多様性国家アメリカですら、時間をかけて多様性は受け入れられていっているのです。

「世界の言語が将来的には5つに絞られるのでは」と聞きました。このグローバライゼーションと、結果起きる多様性は、時代の流れのようです。日本という限りなく単一民族で、かつ地理的にも隔離されている国家が、このいつにない大きな変化に直面しているわけです。問題もあるでしょうし、抵抗もあるでしょう。しかし、日本が多様性に慣れるという点では意味があるのではないかと思いました。

もう一つ思うメリットは、海外の人々に「純」日本を知っていただけることです。金閣寺や伏見稲荷を観光名所として喜んでいただくのはいいのですが、渋温泉のような素朴で何気ない日本の美を海外の方が理解されているのは驚きです。正直、こういった一見地味な日本は理解されないと勝手に思い込んでいました。時代の波があって、初めて可能になったことだと思います。これは嬉しいカルチャーショックです。

ロサンゼルスを「東京24区」と揶揄した人がいるそうですが、日本人コミュニティーを持つこのアメリカの都市と東京との差が縮まってきているように感じます。以下は、ロサンゼルスに住む日本人と多様性に直面する日本の方々へ、多様性への適応のコツです。

  • さまざまな価値観を受け入れるように普段から努める。

  • 自分との違いを感じる対象へこちらから働きかける。

  • 恐怖よりも関心を持つように努める。

  • 言語以外の共通点を持つ(スポーツ、趣味など)。

  • 言語以外のコミュ二ケーションもあることを踏まえる。

  • 違いの一方で、共通点を見つける。

  • 実践的な対策(言語の習得など)を考慮する。

  • アンインテンショナル・バイアス(違いを認知することからくる抵抗感)とディスクリミネーション(偏見)の違いに気づく(前者は起きうることであり、後者は許されないことです)。

  • プライドを捨てること。

  • 恥を捨てること。

  • ステレオタイプ(外国人はこうであるという固定観念など)で判断しない。

  • 正しい知識を持つこと(例えば『ナショナル・ジオグラフィック2018年4月号』は、科学的根拠を踏まえた多様性に関する特集を組み、われわれは既にさまざまな人種の遺伝子を含んでいること、6万年前にアフリカという共通の起源から発生してきたこと、そしてそれは一部であり、アフリカには2千以上の言語というさらなる多様性が存在すること、多様性は既に進み、白人黒人というふうに割り切れなくなってきていること、アメリカは2040年過ぎには白人以外の人種が主要になることなどが取り上げられています)。

  • 白黒思考を排除すること(日本人と外国人、若者と老人、白人と黒人など)。

  • リスペクト(敬意)を払う。

他にもコツはあるでしょうが、とどのつまりは「あなたの普通に思っていることをソフトにする」ということです。固定観念から飛び出て、それをフレキシブルにしていくプロセスを楽しんでください。

マインドフルネス×脳科学 久賀谷 亮 Akira Kugaya,​ MD PhD