弓と禅

日本古来の武道や道のつくもの(例えば茶道)には、マインドフルネスが組み込まれているようです。
「弓と禅」という書があります(参考文献)。80年以上前に出版され、未だ版を重ねる名著は、スティーブ・ジョブズの愛読書だったそうです。


ドイツから東北帝国大学に来た哲学者が、日本文化を知るために行き着いたのが弓道でした。二の矢で一の矢を射抜く技量をもつ阿波研造(阿波研造の行射の様子は、YouTube等で画像閲覧が可能です)という大家に師事します。


2人のやり取りは禅問答のようであり、阿波師範は「弓を射るのは自分ではなく、『それ』である」などと言って著者を煙に巻きます。


教えの中には、さまざまなマインドフルネスに通じる言葉がみられます。「呼吸に注意を向ける」「力を入れずに引く」「意識せずにある」「熟れた実が弾けるように(矢を)放つ」「葉に積もった雪が落ちるように放つ」「力を入れずに引き、その動きを客観的に観る」「自分自身から離脱する」「天と地が弓を引いてるように」「良い矢悪い矢に一喜一憂差別してはいけません」などです。
長い年月の後に、著者は「それが射る」という意味は「滅私」の教えと知ります。

合気道にもマインドフルネスが伺えます。熟達した方が、公開演武の最中に投げられ、地べたで受け身を取るまでのゼロコンマ数秒の中で、聴衆一人一人の顔が見えたそうです。「Zone」に入った状態であったと言ってもよいでしょう。「気を合わす」合気道では、相手が攻め入ってきた時も戦わず、ダンスをするように呼び込み、流れに委ねるところはいたってマインドフルです。


武道では黙想をします。ある学校では、授業一つ一つの前に黙想をする習慣があったそうです。気持ちを整える一瞬を持ってからことに臨む。
ところで、タレントのタモリさんは居合をされるそうですが、彼の振る舞い、存在はマインドフルだなと感じるのは気のせいでしょうか。

*参考文献「弓と禅」
オイゲン・ヘリゲル 福村出版