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M.I.T. Media Lab

Typing on a Computer

2011年4月にMassachusetts Institute of Technology (M.I.T.) のMedia Labのディレクターに日本人が就任したことが話題になりました。

 

上の記事にも触れてあるように、この研究所は、世界的にコンピューターサイエンスの最先端をいき、様々な革新的技術を提供してきました。 例えば、Google Street Viewの先駆けを手がけたり、格安$100コンピューターを発展途上国に提供したり、Amazon Kindleの “ 明るいところでも読める ” という技術を作り出してきました。

脳の時代といわれ、脳科学への関心、投資が積極的に推奨された時期を経て、現在の脳科学の進展はさらに拍車がかかっています。 日本でも、脳科学関連のブームがありました。 テクノロジーの進歩が、脳そして 「こころ」 に新たな科学的、実用的局面をもたらすことが、近い将来の方向であると私は思っています。 その意味で、M.I.T. Media Labで行われているコンピューター技術などに関わる最先端の研究は非常に興味深く、示唆に富んでいます。

興味の赴くままに幾つか取り上げてみましょう。

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まずは、人間の表情を映像的に解析して、その人の「こころ」を知るという試みです。 スカイプで話しながら、言葉に表れない相手の感情がわかったらどうですか? 携帯で自分の顔を写真にとって、それをもとにその日の気分を解析できたらどうですか? 「目は口ほどに語る」、「顔に出る」 。 人間は表情からその人の内面を想像以上に汲み取っています。 コンピューター技術がこれを助けてくれたら、KY= 「空気が読めない人」 には朗報かもしれません。

あなたのストレスレベルがリアルタイムにわかったらどうですか? 皮膚の反応を手首につける簡単なデバイスでモニターし、Bluetoothを介してあなたの携帯へ情報を送る。 その皮膚反応のレベルがその時々のストレスレベルを表す。 どのメールを読んだ時、どの人とあった時、どこにいた時、あなたのストレスが高いか。 さらにそれを参考に、バイオフィードバックといって、ある特定のストレス反応を減らすように自らをトレーニングするなどの応用が考えられます。

このように人間の 「こころ」 をリアルタイムに抽出する技術は、マーケティングなどにも使われます。 「ニューロマーケティング」 と呼ばれるようですが、例えば、あるテレビコマーシャルをみた時の脳の反応を計測し (無線の脳波計で脳の活動をコンピューターへ転送するなどによる)、顧客を引きつける商品開発に役立てる。 実際にインテル、マイクロソフト、グーグルなど大企業が利用しているといいます。

(参考: www.neurofocus.com)

Security Camera

大衆の 「こころ」 を把握するという意味では、こういうのはいかがでしょうか。 MIT Mood Meterというのは、MITキャンパス内の各所にカメラをおき、キャンパスを行き交う人々の様子を情報として得て、コミュニティー全体の気分を経時的に測るというものです。 笑顔の人が多ければよりPleasantであるとか、天気によってコミュニティーの気分はどうだとか、「こころ」 をマスでみるというのは面白い考えですね。

 

グローバルに情報が容易に入手されるようになった今、例えば、グーグルでその時の気分を利用者から一斉に報告してもらい、世界のこの地域の気分はどうだとか、紛争中や災害後の地域は悲しんでいるとか、そういうことを語る時代が来るのでしょう。 また、Google Street Viewが進歩して、そこにいる人々の表情まで捉えられるようになったと仮定しましょうか。 その地域の人々の表情を広範囲に数多く解析することで、グローバルマーケティングの方法として、あるいは地域的な人々の幸せ度の指標として利用されるかもしれません。 (当然、プライバシーの問題がでてくるでしょうけれども)

人間の行動には規則性があるようです。 M.I.T. Media Labの他のプロジェクトでは膨大なデータベースをもとに人間の次の行動を予測する試みがなされています。 でもあまり先がみえると味気ないですね。

行動といえば、こういう試みもあります。 睡眠時に頭にバンドをつけて、睡眠の質を測ります。 日中は、携帯を用いて、自らの行動がモニターできるようにします。 それにより、ある行動が、睡眠の質に影響を及ぼすかどうかを解析し、行動を修正することで睡眠を改善するというものです。

Coding

人間の 「こころ」 の表出の一つとしての 「行動」 を変えることは、睡眠・気分などを改善することがわかっています。 日本でも徐々に知名度が上がってきている 「認知行動療法」 というのは、いわばカウンセリング界のマイクロソフト (今はアップルですか) で、非常に標準的な方法となってきています。

 

つまり、「認知 = 考え方」 と 「行動」 は 「気分 = こころ」 と密接に関連していて、前者2つを変えることで幸せになろうというものです。 M.I.T. Media Labのプロジェクトをみていると、この三者を様々なデバイス、技術で数値化し、よりよいつながりにすることで 、個人がそして社会がより幸せになる方向を手助けするというのが当面起きてくることなのかなと感じます。

他にも人口知能やロボットなど、脳、「こころ」 がオーバーラップする科学領域は多々あります。 夢を映像として記録できたら、と言った人がいます。 また、記憶の低下を補うために、脳に外付けのハードドライブ容量をつけることはできるでしょうか。 (ちなみに人間の脳の記憶容量は140テラビットと言われています。 320ギガバイトのハードドライブの約55個分です。 あるいは、両面二層DVD1000枚程度、全世界のインターネット上の情報の約2000万分の一、米国議会図書館の情報総量とほぼ同じだそうです。)

いまだ多くの点で未知の存在である脳、そして我々の 「こころ」 にテクノロジーがどこまで近づくか見守っていきたいですね。

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