「Dr. 倫太郎」
日本のドラマで、医学系ものはブームのようです。
堺雅人さんが演じるアメリカ帰りの精神科医が主人公です。勧められて少し見ました(すべての人にはお勧めしません)。ドラマという脚色がありますが、何人かの精神科医が監修しており、事実に基づいた部分もあります。
ご覧になられない方のために、このドラマのテーマの一つをお伝えすると、
「カウンセリングは必要」
ということです。
主人公が「薬だけでは治りません」と、旧体制の精神科医たちに言う場面があります。実際、彼は時間をかけて患者と向き合い、カウンセリングをします。
一方で、既存の五分診療に従事する医者が登場します。患者と目を合わさず、コンピューターばかり見て、挙句「次の方!」と切り上げます。
冗談のようですが、実際日本、そしてアメリカでも起きていることです。高名な日本の精神科医がこのような診療をしていると患者さんから聞き、唖然としたことがあります。
このドラマは、その点を指摘していることは評価されてよいと思います。
駐在員の方が心労から休職すると、企業が帰国を促すことがあります。日本だったら慣れ親しんだ環境なので、ということですが、いつもいつもぬるま湯の環境がそこにあるとは限りません。
その方の将来を本当に考えてあげるなら、企業の本質が人間の育成であるなら、問題を改善する少しの時間をあげてもよいのではないでしょうか。
ご本人、そして企業にとって最終的にはそれが利益になると思います。メンタルヘルスの経済効果がGDPの3%という事実がそれを証明しています。
人間の本質的な成長には、カウンセリングが有効です。
企業の方たちはメンタルヘルスの専門家ではないのですから、専門家たちがこのことを教育していくことが大事です。ちなみに、日本はカウンセラーがシステムとして整っておらず、それゆえの「Dr.倫太郎」の嘆きな訳です。
カウンセリングは薬より時間がかかるかもしれません。しかし、必要な時間をかけて成長を成し遂げられたときの患者さん(そして我々の)達成感は大きなものがあります。それは本質的な変化です。多くの方々が、感謝の言葉を残していかれました。
そういうわけで、心療内科・精神科医がカウンセリングに従事するのですが、カウンセリングというものをイメージしていただくために参考になる映画を二つ。どちらもアカデミー賞をとっていて映画自体名作です。
Good Will Hunting (1997)
亡くなったロビン・ウイリアムさんがカウンセラー役、マット・デイモンさんがクライアント役です。無言のセッションが何度かあったり、カウンセラーがそれでも終わりの時間を告げるシーン、カウンセラーとクライアントの時間をかけた関係作りが印象的です。
クライアントのトラウマに迫るシーンは白眉であり、また、カウンセラー自体が癒されていく過程も注目です。
Ordinary People (1980)
家族を亡くしたクライアントのために始められたカウンセリングは、その呼吸、カウンセラーの役割など、非常によく表現されています。
今回はメンタルヘルスが取り上げられた作品などの話になっていますので、幾つか関連の映画について触れます。
社会不安、パニック:
Copycat (1995)
うつ:
つれがうつになりまして (2011)
強迫神経症:
As Good as It Gets (1997)
薬物依存:
Thanks for Sharing (2012)
統合失調症:
A Beautiful Mind (2001)
躁うつ病:
Silver Linings Playbook (2012)
境界性人格障害:
Girl, Interrupted (1999)
認知症:
The Notebook (2004)
On Golden Pond (1981)
反社会性人格障害:
One Flew Over the Cuckoo's Nest (1975)
心的外傷後ストレス障害:
The Deer Hunter (1978)
American Sniper (2014)
Because of You (Song)
ざっと印象に残っているものに触れました。作品としても素晴らしいものばかりです。また別の機会に他のものも含めて詳しくご紹介したいと思います。