パニックって? その1

第12回 「不確実性とつきあう — 不安克服法」では、不安についてお話ししました。

パニックは不安の一つの表現形であり、「パニックになる」 といわれるように、突然起こる強い不安が特徴です。

典型的には、動悸、過呼吸、発汗、震えなど様々な身体の症状がみられ、強い不安が襲います。 自律神経のなかでも、交感神経というものが暴走し、オーケストラを奏でるかのように、人それぞれ様々な身体症状を作り出します。 そのバリエーションたるや、無限と言ってもよいと思います。

『おやじの背中』 という日本のドラマの中で、松たか子さんが演じる女性が夜一人になると過呼吸発作を起こすシーンがあります。 パニック障害について取り上げたドラマです。 幼少時、彼女をかばって母親が亡くなったことがトラウマとして残り、パニック発作を引き起こしている例でした。

パニック時には、「心臓発作になるのでは?」 「失神してしまうのでは?」 「死んでしまうのでは?」 などという考えがよぎるほど、それはそれは恐ろしい感覚です。

他の不安現象、例えば、恐怖症 (飛行機、高所、へびなど様々なものに対する)、心的外傷性ストレス障害 (PTSD) など、あるいはうつ病など他の心理状態に伴って表れることも多いです。

さらにパニック障害といって、パニック発作とそれが再び起こることを 恐れる二次的不安との複合体も知られています。

パニックは突然起こり、その最中は正にパニックなので、何が起きているかを容易に理解することは困難です。 また一度起こると、似たような状況あるいは身体の兆候から、「またパニックが来るのでは」 という不安がさらなるパニックを引き起こすことも頻繁です。

ある状況 (飛行機の中、高速を運転中など) で起きる場合、あるいは社会不安という状態 (公衆のなかで起きる、人前で緊張すると起きるなど) などもあります。 ロサンゼルスは日本へ渡航する、高速を運転するなどの特徴的な場面が多く、特徴的な場面でのパニックに苦しまれる方が多いようです。

『Copycat』 という映画がありましたが、主演のシガニー・ウィーバーさんが強い社会不安のため外出できず、ホールに届けられた戸外の新聞を必死の形相で室内に取り込むシーンがありました。 このように、不安は外出を困難にしたり、飛行機に乗ることをできなくしたり、様々な形で我々の社会生活に影響を与えることがあります。 パニックはそのなかで、非常な苦痛を伴う不安のピークといってよいでしょう。

不安についての理解、不安に対する基本対処法 (これをA.W.A.R.E.とよぶことがありますが) などを習得することから始まり、様々な対処を身につけることで、この状態は改善していきます。

パニックは、「条件付け」 と呼ばれる現象が関連しています。 「パブロフの犬」 で知られるように、あることを脳が学習して憶えてしまうが故に、それを解除することが難しいという状態です。 この場合、パニックという苦しい現象をある場面で経験したが故に、脳がそれを憶えていて、同じ場面に近づくことで脳が警告を発するわけです。 「そこには危険がある」 と―。 それが暴走気味に続くことで、パニックが続くわけです。 この「条件付け」 という脳の働きを少しずつ解いていく過程が必要です。

パニックは不安です。 不安と恐怖は厳密には定義が異なりますが、いずれもその対象 (例えば飛行機に乗ること) を避け続けることでは、根本的な解決になりません。 「恐怖を克服する唯一の方法は、向き合うこと」 です。 回避は、短期的な解決にはなりますが、恐怖、不安はそこにあり続けますので、再び表れうるわけです。

最近のNew York Times一面で、水恐怖症の方が取り上げられていました。 このような何らかの恐怖症を持つアメリカ人成人は、約2,000万人といわれています。 この記事に取り上げられたプロのドラマーである彼は、一念発起して永年の水恐怖を克服しようと取り組んだのです (つまり、回避をやめたのです)。

また、パニックの裏には、その方の気質や生きるペースなど気付かれてなかった要因が背景にあることがあります。 パニックはその氷山の一角として、それらの要因を我々に気付かせてくれているようにも思います。

恐怖症、パニックなどには、それを克服していくための適切な方法があります。 それは、あなたの人生、あるいはあなたという人間を見つめ直すことと無縁ではありません。 是非正しい方法で、多くの方がこのことを克服していく (根本的に解決する) ことを望みます。