ゴルフの心理学 1

ゴルフはメンタルなスポーツの代表として知られています。 今回はゴルファーに贈るゴルフ上達のための心理学です。

 

ゴルフスイングについてあまたの書籍があるなかで、そのメンタル面についてバイブルとされる本があります。

「Golf is not a game of perfect」

私は最初、プロゴルファーを目指す方から薦められたのがきっかけで手に取りました (*1)。 著者はスポーツ心理学者で、様々なスポーツでメンタルの指導を経験し、ゴルフのメンタルコーチとして広くその名を知られています。 彼は名だたるトップゴルファーのコーチをしたことでも知られます。 Tom Kite、Nick Price、Pat Bradley、John Dalyなど、彼が指導したプレーヤーがこの本にも登場します。

私自身のゴルフとの関係を申し上げますと、かなり昔にそれなりに取り組みましたが挫折、こんなストレスを背負い込むスポーツは割に合わないとやめました。 長い沈黙の後、最近思い立って再開。 というのも、熟年の方があふれんばかりの笑顔でゴルフについて語っているのをみて 「ああ、本当に楽しんでいらっしゃるのだな」 と思ったのがきっかけでした。

ゴルフはもちろん止まったボールを打つ競技です。 それ故、色々なことがあなた次第です。 ゴルフをされた方なら経験がおありかと思いますが、あなたの心理状態が多分にプレイに影響します。 プレーが思ったようにいかなければ、大変なストレスを感じます。 楽しみでやっているのに何が嬉しくてストレスを背負い込むのか。 フラストレーションがさらなるミスショットを呼ぶ。 その一方で、ゴルフに 「はまる」 方は多い。

上記の本は20年前に出版されていますが、そのシンプルなメッセージには感銘を受けます。 本連載の第14回でもとりあげた 「認知行動療法」 というヒトの 「考え方」 に焦点を当てているのが新しい。

この内容に、スポーツ選手、パフォーマーと接した私の経験からの観点、脳科学的視点を加えて、ゴルフのメンタル強化について解説します。

ミスショットが続いてイライラする

ゴルフは本当に思い通りになりませんね。 目の前の動かないボールが相手なのに結果は様々。 「きれる」 人も少なくありません。 ゴルファーの方で、ラウンド中に怒りがコントロールできないという方がいらっしゃいました。

【教訓1】超ポジティブにプレーする

ミスショットは必ず発生します。 プロでもそうです。 しかし多くのトッププロに共通した性質があります。 彼らは 「超」 がつくポジティブなのです。 50%の確率でバスケットボールのフリースローが入る選手がいます。 その選手が一度ミスすれば、次は確率的に入ると考える。 これはポジティブです。 さらに何度もミスが続いたら、次が入る確率は50%よりもさらに高いと考える。 最後には確率を超えて、何が何でも入ると思う。 トップアスリート達は、統計をねじ曲げるぐらいの自信を維持し、仕事を遂行するのです。

 

当コラム第11回で 「ポジティブ思考」 について取り上げ、ゴルフのパットと脳科学について触れました。 タイガー・ウッズは最もプレッシャーのかかるここ一番で難しいパットを沈める。 パットを打つ前に脳の活動 (前頭葉近辺の活動のゆらぎ) を測定すると、これがパットの成否を予測したという研究データがあります。 トッププレーヤにみられるポジティブ思考や自信というものは、このゆらぎというものを無意識に制御してプレーの質を高めている可能性があります。

【教訓2】ナイスショットをしっかり喜ぶ

一喜一憂は戒められがちですが、92年のマスターズに勝ったFred Couplesは、最終日前夜こう言ったそうです。 「ショットを打つ前には、そのクラブでこれまでに一番良かったショットを思い出して打つ」。 良いショットが打てたらしっかり楽しんで喜んでください。 強い感情はその良いショットの記憶をより強く、長く持続させてくれます。 強い感情と記憶の関係は脳科学でも証明されています。 良いゴルファーは、過去のいくつかの良いショットをよく覚えています。 ゴルファーが陥りやすい、良くない認知のパターンは、悪いショットをより過大に覚えていることです。

【教訓3】すべてのショットを受け入れる

ミスショットも受け入れてください。 それを引きずって次のショットに影響が出るというのはよくいわれています。 すべてのショットを受け入れることで、より安定したプレイをする。 みっともないショットも含めてのラウンドを終えることを楽しんでください。

野球の投手で、ヒットを打たれると意気消沈してプレーが続行できないという方がいました。 あるいは、無様なプレーをして恥ずかしい思いをし、その後本来のプレーができないという選手もいました。 メジャーリーグでトッププレーヤーに関わる方に 「メジャーリーグのトッププレーヤーは、試合で思い通りにいかなかったときに、どのように気持ちを立て直すのか?」 という話を聞いたことがあります。 答えは、「ピッチャーなら、1点を取られたら次を取られないようにする。 最後に勝つということを念頭におく」 ということでした。 ゴルファーに限らず、彼らは日々失敗と格闘しているのですね。 気持ちの切り替えは必要な技術です。

「Golf is not a game of perfect (ゴルフとは完璧ではありえない) 」 なのです。

練習ではうまくいくけれど、ラウンド本番ではだめ

ラウンド中にスイングに迷うことはありませんか? ミスがでると修正しようとする。 どのような考えでスイングをするのがよいのでしょうか?

【教訓4】ラウンド中はスイングをあれこれ考えない

ドライビングレンジの練習はうまくいくのに、コースに出るとうまくいかないという経験はありませんか? ゴルフスイングは意識をすると、自然なリズムや流れが失われる性質があります。 バスケットボールのフリースローもそうです。 彼らはスローする時には詳細を考えていないでしょう。 そのかわり、スローする前に各自のルーチン (ドリブルを何回して、ボールを手のひらでまわしてなど) をして望む。

 

ゴルフスイング中に、肩をどうして、コックをどうしてなど技術的な詳細は考えない。 特に緊張したり、ミスを恐れるときに、スイングに意識がいきます。 そしてそれは一定したスイングに乱れをもたらします。 トッププロ (Jack Nicklausなど) も、ラウンド中にスイングをいじることはほとんどないようです。

【教訓5】あなたのスイングを信じなさい

スイングのメカニズムを考えて打つのはドライビングレンジのみとし、ラウンド中は自らのスイングを信じる。

【教訓6】ターゲットに向かって反応するのみ

打ちたい場所をターゲットとし、それに純粋に反応するようにスイングするのみに集中する。 ターゲットはなるべく小さい方がよいです。 人間の脳は、その方がよりよく反応します。

【教訓7】良い打球のイメージをする

スイングの詳細よりも、どういう弾道でターゲットへ向かっていくか、良い打球のイメージのみに集中します。

【教訓8】ラウンド前に今日のショット一つ一つをどのように考え、遂行するかを決めなさい

ラウンド中は考えない。 ラウンド前にその日の方策を決めておくだけ。

ゴルフに 「はまる」 一つの要因は、この不規則な報酬性でしょう。 つまり、一つ一つのスイング、ラウンドの結果の予測が難しい。 ひょんなときにスカッとする良いショットがでる。 ミス続きのホールでチップイン・バーディーがでる。 規則的に良い結果 (報酬) がでるよりも 「はまり」 やすいのです。

これはくせになるはずです。

第二回につづく)