きちんとした治療のない時代、彼はどのように「うつ」に対処したのでしょうか? 先の書籍は「ユーモア」をその一つとしてあげています。 時にユーモアは、つらい状況を和らげる対処方法として確かに知られています。

さらにこの本は、この「うつ」が如何に彼の偉業達成へ助けとなったのかを検討しています。

ある医師は、「人間は苦難にあるとき、自らの才能を引き出し、運命を超越する『目的』が必要である」と言っています。 これはまさにリンカーンの状況にあてはまります。 その後、彼の「うつ」は和らぐどころか強くなるのですが、それに呼応するように彼の人生は豊かになっていきます。 「うつ」に引き戻されるたび、彼は新たなる「目的」に結びつけることで対応していきます。 奴隷制廃止は、彼に「目的」を与えます。 つらさでしかなかった「うつ」を通して、彼は「意義」を見い出していきます。 彼は不完全であることを見つけ、そこから得れるものを探します。

1850年代の初頭。 リンカーンは鬼気迫る悲しい様子で言いました。 「自分がこの世を去るとき、もしこの国が、自分がそもそも存在しなかった場合と比べて少しでもよくなっていなかったなら、それはなんと、なんとつらいことか」。 40年以上の人生の中で、何ら世界に貢献できていない自分を嘆くこの言葉は、彼の人生の転機になったとされます。 「何か貢献したい」。 そう願うほど、現実とのギャップからくる彼の痛みは強まったと思います。 しかし、その痛みにどれだけ長く耐えうるか、そして希望を持ち続け、その時に備えて準備をしておけるかなのだと著者は言います。

(「リンカーン」のメランコリー 3: うつによる偉業に続く)

マインドフルネス×脳科学 久賀谷 亮 Akira Kugaya,​ MD PhD