「フェイスブックを始めてから、もっと孤独を感じる。」

ある人が言いました。 この、一見矛盾した感想は私にとってフェイスブック、あるいはソーシャルメディアにまつわる心理的影響を調べるきっかけとなりました。

LinkedIn 創設者として知られるIT業界のビッグネーム Reid Hoffman は、将来の展望について聞かれ、「The future is social」 と言ったそうです。 ソーシャルメディアはその地位を確立し、さらに拡大していっています。 それは文化といってもよく、人間社会に多大な影響を及ぼしていることは間違いないでしょう。 音信のなかった同窓生と何十年ぶりにつながったり、遠く離れた家族と密に情報を共有したり、我々は 「つながる」 新たな道を獲得したわけです。

 

一方、このコミュニケーションの変化は、人間の心理そして行動へどのような影響を及ぼしているのでしょうか。 幾つかの本をひも解き、情報を検討し、考察を加えた結果を3回にわたってお伝えしていきます。 その中には、我々の生活に浸透し、我々が慣れ親しんでいるソーシャルメディアへの警鐘を透かし見ることができます。

第一回は、フェイスブックが癖になってやめられない、「フェイスブック依存」 についてです。

California State University, Dominguez Hills の心理学教授 Larry Rosen が 若年者に対しておこなった研究によると、 「フェイスブックは学生の注意力をそぎ、学力の低下を招きうる。 15分間の勉強中にフェイスブックを少なくとも1度チェックしたミドルスクール、ハイスクール、カレッジの学生は、成績が低かった。」

「常にフェイスブックを開けた状態でいなければいけない」 「常につながっていないと不安」 「つながっていない間に何か大きなことを見逃すのでは」 などという気持ちを、「フェイスブック依存」 と表現する研究者もいます。 薬物やアルコールなどに対して用いられるあの 「依存」 です。 より近いのは 「インターネット依存」、「コンピューターゲーム依存」 などでしょうか。 フェイスブックを開きたいという強い欲求があり、長時間を フェイスブックで過ごす、という現象です。

こちらをご覧いただくと、「あなたがソーシャルメディアに依存しているかもしれない10の兆候」 が出ています。 「ソーシャルメディアで何か動きがあったら、アラームがなるようにしている。 その結果やっていた作業がおろそかになる」 「名刺に自分のことを The Social Guru と書く」、「Twitterで可能な限り母音を省略する」 などです。

 

実際こういう事をやっている人は多いと思いますので、これは結構ユーモラスに見るべきでしょう。 この症状でイコール依存症とするのは行き過ぎかなと思いますが、最後の二つ、「2分ごとに携帯をチェックする」 「ネットあるいはサイトがダウンすると怒りが爆発し持続する」 は特に依存という状態を表しているかなと思います。

一般に、依存症というのは医学的に以下のように定義されます。 「薬物」 を 「フェイスブック」 と置き換えて読んでみて下さい。

1.薬物をずっと使っているために、効きにくくなっている。 自分が望む効果を得るためには、かなりの量が必要。

2.離脱症状 (禁断症状) がある。 同じ薬物を再び摂取すれば消えてしまうので、離脱症状を軽くしたり、なくすために使ってしまう。

3.しばしば、最初の頃よりも大量に、また長い時間使用している。

4.いつも薬物の使用をやめるか減らすかしたいと願っている。 しかし、実際にやってみたことがあったとしても、失敗している。

5.薬物を手に入れるためなら、長時間をかけるのも惜しまない。 (たとえば、長距離を運転して入手しに行く) また、薬物を使用したり、薬物の作用から回復するために費やす時間も長い。

6.薬物のために、重要な社会的、職業的な活動ができなかったり、娯楽を放棄しているか、減らしている。

7.精神的な問題や身体的な問題が薬物のためにいつも起こっており、たとえこれ以上続けると悪化するとわかっていても、やめられない。

2分おきに携帯をチェックする人、先の研究にみられたように、勉強中にチェックをしてしまう学生、これらは上記の3番、6番に関連してくるでしょう。 サイトがダウンすると怒り爆発の人は、2番、7番などがあてはまるでしょう。 一般の 「依存症」 の定義は、7つのうち3つ以上が1年以内にあてはまると可能性があるとなっています。

フェイスブックに依存症の概念があてはまりうるという感覚はわかっていただけたと思います。 それでは、典型的なフェイスブック依存はどのような状態でしょうか。 Nnamdi Godson Osuagwu による 「フェイスブック Addiction」 (Ice Cream Melts Publishing) では、ある日、学生時代の友人からフェイスブックを始める事を勧められた女性の話が登場します。 最初は半信半疑でしたが、あっという間に300人の友人ができ、仕事場でも携帯を用いて Sneaking (こっそりフェイスブックをすること) し始めます。 携帯でフェイスブックを使うためのアプリを手に入れる事にも迷いはありませんでした。 どっぷりつかれば浸かるほど、フェイスブックから離れる事で、皆とのつながりが途絶える恐怖を感じます。

 

ある日、仕事場のトイレで半日をフェイスブックに費やし、自分に何か問題があることに気づきます。 やめなければと思い、一度はフェイスブックから脱退しますが、その後、戻りたいという衝動に勝てず、「再発」 します。 彼女は完全に自分のコントロールを失い、自責感にさいなまれ、仕事にも日常生活にも深刻な影響がでています。

先に示した依存の定義と読み比べられると、いかに彼女がそれにあてはまっているかお分かりいただけると思います。 彼女はSocial Networking Addiction Meetingに参加して治療を始めたとあります。 これは、自助グループと呼ばれるものです。 AA (Alcoholics Anonymous) Meeting (お酒への依存がある方が集まって互いに助けあうもの) は聞かれた事があるかもしれません。

 

こういった自助グループは、12 Steps と呼ばれるプロセスを基本構造として、依存というものは自分のコントロールの及ばないものであることを受け入れ、Higher Power (神など絶対的な存在ですね) に預ける事で問題を克服していくというものです。 AAに限らず、NA (Narcotics) など他の薬物に対して、そしてGA (Gambling)、SAA (Sexual Addiction) など様々な依存に対して同じような集まりがあります。

自助グループに参加するほどではない、という方にも、ご自分がこの問題を持っている事に気づく、そしてそれを認めることが最初のそして一番大きなステップになります。 ご家族など周囲の方がその方の問題に最初に気付き、アドバイスをしたり、治療を勧めても、ご本人に認識のないことが多くあります。 我々専門家は、Motivational Interview というご本人の問題意識を引き出す方法を用いて、必要な治療へ導くよう関わります。

そこまでも必要のないという方は、大きく分けて対処に2通りあります。

  1. フェイスブックを突然やめる。

  2. 徐々にやめる。

のいずれかです。 これは、非常に意志の強さを要求されます。 時に周囲の協力を得たり、実践的にはコンピューター、インターネットへのアクセスを制限したりという対処が考えられます。 そうは言ってもまだ携帯がありますが。

ところで、子供達が過剰にソーシャルメディアを使いすぎているという親御さんの相談も増えています。
American Academy of Pediatricsは子供への影響についてのレポートを出しています。
http://pediatrics.aappublications.org/content/early/2011/03/28/peds.2011-0054.full.pdf+html

 

ガイドラインを作る事で、より自身でのコントロールが難しい子供達とソーシャルメディアの関係についてアドバイスしています。 基本は、ソーシャルメディアを始める前に、親と子がきちんとした条件を話し合い決めておくということでしょう。

ソーシャルメディアがここまで普及する理由として、人間が本来孤独に対する弱さを持ち、つながっていたいという欲求があるからだと指摘されています。 次回はこの 「孤独」 に焦点をあてます。