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​心のワクチン

映画「タイタニック」で、まさに沈没するシーンがありますね。
我先に救命ボートに乗ろうと、他人を蹴ちらす人。
人々の心を鎮めようと、命を顧みず音楽を奏でる楽団(あれは本当に素晴らしいですね)。
でも、多くの人々は前者ですね。いわゆるサバイバル・モードです。
生物として生きながらえるために、自分を守っているわけです。と同時に、他人を攻撃します。

今、人類の船は傾いていますね。
みんな不安になって、生きようとしますね。正当な不安です。
不安パンデミックだとも言われますが、生物集団として、この不安は必要なことですよね。

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ただ、サバイバル・モードが昂じた不安は、混乱を起こします。
ちょうど、コップにいっぱいになった水が、ちょっとした拍子であふれるように。


2021年1月、アメリカ議会に暴徒が侵入した事件は、日本でさらりと報道されましたが、アメリカでは、ここに混迷極まるという感じでとても深刻視されました。
人種暴動や略奪暴動もひどかったのですが、言ってみれば、ケネディ暗殺や2.26事件のような国家危急の事態が起きたのですから。
アメリカはそれくらい、コップが常にあふれかけているのです。

 

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分を守る。そして他者を押しのける。
必要善の不安がいつしか暴走する。行き過ぎのサバイバル・モード。


理性/道徳と感情は、よく言われるようにシーソー関係にあります。
サバイバルする時には、理性は働きづらくなっています。感情がボスです。
例えば、感染者数の変動に対する人々の反応ですね。日本とアメリカを行き来すると気づくことがあります。
ご存知のように、アメリカはふた桁多いのですが、日本でも数が増えると動揺が走り、人々は反応します。
それは必要なことですが、ちょうど、株価が心理的に変動するのと一緒で、感染絶対数に関係なく、過剰に振り回されている面があります。
一喜一憂する、感情主体の人間行動が透かし見えるのです。それがエスカレートすると、エゴの暴走に要注意です。

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脳にDMNという回路があるわけですが、自分と他者を見分ける働きがあります。
その前方部分は理性脳に近くて、いい意味の「自分」という感覚を司ります。
一方、後方部分は、感情の中枢(扁桃体)に近く、ここはいわゆる「わがまま」「自分自分」の脳です。
感情が波立ってると、それに影響されて自己中になるように人間はできているのです。


サバイバル・モードの暴走で、自分だけを守る、いやーな人間になるメカニズムです。

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アメリカではワクチンの接種が始まっています。
mRNAを用いたタイプですが、これまでのワクチンが4年以上かかっていたのに、11ヶ月でマーケットに出ました。
これに先立つ30年、実は長いワクチン開発の流れが脈々とあったのです(https://www.health.harvard.edu/blog/why-are-mrna-vaccines-so-exciting-2020121021599)。
そのプロセスは、さらに、DNAの発見、遺伝子配列の解読技術、情報を迅速に伝播する技術などの後ろ盾があったからこそ可能だったのです。人類は知的なのです。

 
生き物として生きるための独善か、知性を用いて共存する道か。どちらを選びますか?

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ホモサピエンスは、知的にカテゴリーを作って、それに従う群れをなすことで生き残ってきました。
言ってみれば私たちは、知性と協調が専売特許で、それゆえに今ここにいるのです。

コロナワクチンのように、ちょうどマインドフルネスは40年ぐらいの時を経て、私たちの目の前にあります。
今日々の生活で出会う、理性と感情のシーソーバランスのジレンマに、絶妙のさじ加減を教えてくれます。わがまま脳を静かにさせます。我(が)を諌め、共存を助ける「心のワクチン」かのようです。

ここにも人類が積み上げてきた一つの叡智があるのです。

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